基本紹介編集履歴
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美食家にはつとに知られた処で、訪れる客人にはいつの時代も政界・財界や文化人の方々など、各界を代表される要人も多く、その高名は広く海外にまで知られている。この店が登場する小説や随筆も数知れず。志賀直哉『暗夜行路』 瀬戸内晴美『京まんだら』 川端康成『古都』その他多数。
すっぽん料理のこちらは、元禄年間(江戸中期)、初代・近江屋定八が創業してから、約330年もの間、すっぽん一筋に17代続いた老舗です。現在の店舗も当時のまま営業しておるようです。すっぽんの○鍋とはよく言われた言葉だが、実はここ大市が発祥であり、商標も取られているのです。つまり正真正銘の本物のすっぽんを食べさせてくれる、ということ。京都の町屋特有の造り、紅殻格子の外観や上に付いている虫籠窓などが美しい。挨拶をしながら中へ入ると、お待ちしておりました、と静かな出迎えを受ける。別段大層なものではなく、というかむしろ冷たくよそよそしい感じにもとりようには採れる。だが、これぞ京都名物いけず。それは陰険ではなく、意地悪でも皮肉でもイヤミでもなく、毒舌とも違うニュアンス。こういうところにも京の魅力を感じてしまう。建物の内観は非常に伝統的「うなぎの寝床」と呼ばれる狭い間口、深い奥行きもしっかりととられている。坪庭や井戸もあった。決して豪奢ではないが、古色蒼然たる趣がかえって落ち着く古き良き風情を残し、どこか懐かしい風を届けてくれます。