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【北西部】
南大門口から入ると,雑貨や食料品(青果除く)の店が並んでいる。この辺りは,韓国人専用に近い区域で,日本人観光客がわざわざ買っていくようなものはほ とんど売られていないが,値段は安いので,長期滞在の日本人には必要な地区ともいえる。道の両側に店舗があり,道の真ん中などに屋台(ワゴン)がある。ワ ゴン品はかなり安いといえるが,交渉またはまとめ買いでさらに安くなるので,くつ下1足1000Wが20~30%引きにはなるだろう。別のワゴンでは雑貨 に混じってタコが売られていた。これは旅行には最適のグッズで肩や首など凝ったところを押す指圧道具である。指圧となる足が8本もあるので広範囲にわたっ て心地いい。1個1000Wくらいである。
日本の製品も売られているが,店によっては食料品と雑貨がゴチャゴチャに並べられているところもある。カップ麺は韓国オリジナルもあるが,日本からの輸入 品がそのまま売られている。値段は日本より高くなってしまうので,あまり買う人はいないのではないかと思う。むしろ日本人が夜食に買い求めていくのではな かろうか。食料品は豊富で,ある店では店頭にずらっと並べられていて,どこからどういう風に手に取ったらよいか迷ってしまう。
西部地区の通りは圧倒的に韓国人が多い。日本人観光客が泊まっている明洞地区は東側なので,あまりここまでは来ないようだ。子どもの水着が店先にぶらさげ てあった。どう見ても著作権侵害だろうが,南大門市場では常識である。一方韓国のオリジナルキャラクターらしきものもある。
とにかく韓国らしさを味わうにはもってこいの場所だ。東部ばかりでなく,西部に足を踏み入れなくては面白くない。
【南西部から中央部】
一般店舗市場の中心に入ってくると,日本人を意識した店が多くなってくる。日本語が看板や窓ガラスに書かれ,「安さ」や「品質」などを強調してい る。とくにメインストリートでは,日本人がよく購入する高麗人参やメガネの店がやたらに目立つ。ここで売っている高麗人参は,たいがい東部の薬涼市場から の仕入れなので,価格が上乗せになっていて,安さを強調しているわりには安くはない。安い高麗人参を買おうと思ったら,薬涼市場に行くのが一番だ。メガネ は30000Wからあるが,円安となった今は日本の格安メガネと値段の差はない。しかし,10分足らずで作ってしまう速さには日本は完敗である。メガネが 必要な人はここで作っても損はない。日本語が書かれた店では日本語が通じるので,ハングルがまったくだめでも失敗のないちゃんとした買物ができる。
この辺りはけっして日本人観光客向けの店が並んでいるわけではない。韓国人向けの雑貨や食品も売られている。石で作られたビビンパプの容器や焼肉用の鍋な ど,日本の一般の店では,なかなかお目にかからないものを見ることもできる。また,道路上では店舗を持たないアジュンマが店開きをしている。エゴマの葉や 青トウガラシなどの野菜を売っている。エゴマの葉は,焼肉と一緒に巻いて食べる薬味のような野菜で,苦味があるので,けっして美味しいものではないが,体 にはよさそうだ。青トウガラシには,辛いものと辛くないものがあるが,見分けはつかない。かといって日本語が通じないので,辛くないものを買うのは生易し いことではない。東京・新宿の韓国広場にも両方の青トウガラシが売られているが,「辛くない」と書かれた青トウガラシを買ってきても,たまに辛いものが混 じっていて(5~6本に一本くらい),舌が数分麻痺してしまうことはよくあることだ。未経験の人にはぜひ青トウガラシにサムジャン(味噌)をつけて生で食 べてもらいたい。食卓でスリルが味わえる!
【南部と西部の裏通り】
南部と西部の裏通りは青果・魚・肉などの生鮮食料品が多い。とはいえ,雑貨や衣料などの店も混在し,肉を売っている隣で衣類が売られたりしてい て,人々の活気も他の場所よりはあるように思える。東京よりカラッとしているとはいえ,真夏の炎天下でも,屋外で魚が売られている。日本と同じような魚を 食すので,見ていても何ら違和感は覚えず,日本の市場と見間違うほどである。タコ,イカ,タチウオなどおなじみの魚ばかりである。韓国伝統菓子を売る店も ある。韓国の菓子は餅米を使うものが多く,それに餡やナッツを組み合わせたりするので,日本の菓子とはちょっと違うが,ケーキの部類とはまったく違い,日 本には近い。甘さは和菓子よりもあるので,甘党ではない限り,たくさんは胃袋に入らない。
さて,このあたりの裏通りは,表通りよりは狭い。食品を売る店と飲食店(といっても屋台に毛の生えたよう店だが)がひたすら並び,店主がそばで待機してい るのだが,午前中は来客もまばらで暇そうにしている。ここが混雑するのは朝の早いうちと夕方だろう。奥に入っていくと暗い通りもある。仕事をしているのか していないのかわからないほど,シーンとしていて。時折,出前を運ぶおばさんが通り過ぎるくらいの路地である。出前は頭の上に載せて運ぶのが基本で,どこ かしら東南アジアを髣髴させる光景だ。さらに南下すると,アーケード上の食堂街に達する。通りを挟んで両側にカウンターだけの小さな店が20店ばかり並ん でいる。夕方ともなると,ちょっと一杯とおつまみ目当てに来る人も多い。日本の屋台感覚だが,値段はこちらは激安で,ぼったくりはまずないので,安心して 食べたり,飲んだりすることができる。他にも安い店が多く集まっているので,南大門市場でお腹がすいたらこの辺りで食べるのも一案である。
【ビル市場】
ビル市場は東大門市場よりは建物数は少ないが,それでも10棟ほどの中層ビルに入っている店舗数はかなりのものである。ビル内の通路を全部歩くと 数キロになってしまうだろうから,すべてを見て歩くことは不可能である。幸い,棟によって商品群が異なり,また同じフロアーには同じ商品群の店舗が入るよ うになっている。棟同士は各階とも外廊下でつながっており,ここから眺める市場の様子は圧巻である。通路は概して狭く,人のすれ違いができるほどしかない ので,商品の搬入には相当苦労しているだろう。所狭しと並べられた商品は品数が多く,国内品,輸入品などないものはないと言えるだろう。値札は貼られてい ることが多いが,やはり市場だけに交渉が肝心である。
欲しい物を絞り,その品物が集まっているフロアーを集中的にまわることが,このビル市場では早道である。話のタネに一通り見て回ることはできるが,徒労に終わる可能性があるので,行く前に準備を周到しておこう。
迷路とはいわないが,行く前によく調べた方がいいのがビル市場だ。どの建物も似たような外観なので,まず行きたいところに行き着くかが当面の問題である。 衣類や雑貨だけだと思った品物が,生花まであるのには驚く。それもこのような生モノは1階にありそうなものだが,ビルの上のほうのワンフロアーを占めてい る。行けば行ったで驚くことも多いビル市場は,東南アジアではなかなかお目にかかれない。
それは市場といえば,平屋が続くのが普通で,ビルに入っている市場というのは珍しい。ベトナムやマレーシアには2階建てくらいの大きな建物に小さな店が集まっている市場はあるが,ビルがいくつも集まって建っているのは,たぶん韓国だけだろう。
ビルとビルの間の渡り廊下から,下の市場の様子を見渡すと,雑然とした市場の雰囲気が視覚から伝わってくる。東アジア〜東南アジア全体で見ることのできるこの風景はなぜか日本にはない。たぶん東シナ海を渡りきれなかったのだろう。
【 ビル市場の東側】
ビル市場の東側の一般店舗市場とビル市場に挟まれた市場の辺りは,午前中でもかなり込み合っている。この辺りは衣類が圧倒的に多い。Tシャツ,スーツ,下 着,などありとあらゆる衣類が豊富に並んでいる。アジアからの観光客向けの韓流スターグッズの店もあるが,明洞ほどではない。道の真ん中にも店を開いてい る人も多く,また人並みがあるので,真っ直ぐ歩くことは困難である。店の数も半端ではなく,あちこちに目移りすると,人にもぶつかるし,歩きにくいことは この上ない。西側は観光客向けののりやキムチなど乾物・発酵食品やメガネなどの店が軒を連ねていたが,こちら東側はほとんど地元向けの店のオンパレードで ある。よって南大門市場の雰囲気がいちばん伝わってくるのがこの辺りともいえよう。品数は豊富で,日本語も通じることが多い。というより,店先から日本語 で話しかけてくるので,完全無視を決め込むことも難しいかもしれない。日本人は見ればわかるようだ。まず,カメラ持参であり,キョロキョロまわりを見渡し ながら歩く仕草だと思われる。
ミリタリー用品の店があった。韓国にも米軍が駐留しているので,その放出品か横流しとみられる品物もあるし,韓国軍の迷彩服とおぼしき品物もある。日本で 自衛隊のグッズや米軍放出品を売っているようなものだから,日本では考えられないことだ。道の真ん中に置かれている垢すりグッズ,日本人観光客にも人気で 束で買っていく人が多いとか。色鮮やかなチマ・チョゴリの店もあった。ちなみに下がチマで,上がチョゴリである。見ていて楽しい南大門市場見物もあと少し だ。
【一般店舗市場北側】
この辺りは明洞方面からの進入路にあたるので,人の数はもっとも多い。明洞から来ると新世界百貨店を 経て,南大門市場のいちばん東側に到達する。人が多いといっても,南大門市場の中では最も道幅が広いので,歩くのが困難になることはない。しかし,ワゴン セールのように,道の真ん中で店を開いている場合が他の地域よりも多いので,意外と道幅は狭くなっているのが現状だ。店舗を構えている店では衣類,カバ ン,靴などの販売店が多い。
北側の韓国銀行本店(隣は貨幣金融博物館)のある通り(南大門路)に出る路地には飲食店が並ぶ。南大門に出ると,ワ ゴンでブタの貯金箱だ,金属の箸とスプーンのセットだ,などが売られている。ここから明洞へ行くには地下道を通って行かなければならない。韓国では未だ戦 時体制のため(1950〜53年の朝鮮戦争はまだ終結していない),防空壕の役割を地下道が担っているので,やたら多い。単なる地下道ではなく,地下には 商店街も発達している。単に地下を渡るというより,ショッピングしながら渡る地下街の位置づけになっている。