基本紹介編集履歴
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九壺堂は6時までなので、その後にもう一軒の店へ私を連れて行こうとC小姐があらかじめそのお店に連絡をしていたことを私はその時知らなかった。ところが閉店後まで残っていた私たちに紳士が請客(ご馳走すること)してくれると言う。蚣兄佞皸貊錣帽圓、ということになり、C小姐も断れなかったらしい。最初は牛肉麺という話だったので、すぐに解散になるだろう、と思っていたら紳士がピカピカのトヨタで乗りつけた場所は日本料理店だった。「おいおい、何で敢えて和食・・それも台湾人の経営する台湾式和食・・」とC小姐と顔を見合わせたが、そこには奇妙な関西弁を駆使する台湾人の店長がいて、私に盛んに話しかけてくれたりして、それはそれでかなり盛り上がった。焼き魚と巻き寿司がとても美味しかった。お開きになったのは9時。蚣兄佞鬚泙今唯劭圓留悗泙覗り、そのあとC小姐が紳士に住所を伝え、目的の店に向かう。私はこの時初めてまだ行くところがあるのだ、と知った。着いた場所は長安東路一段、華山公園のそばのマンション。こちらも2階のワンフロアを利用してサロン風にしつらえている。[木龍]翠坊。ここはお茶と茶人料理の店。コースのみの昼食と夕食。人数限定で予約を取る。残念ながら私が台北に滞在している間は食事の予約は満席で、お茶だけ飲ませていただくという話でC小姐はお願いしてくれていた。6時過ぎにはやってくるだろうと待ち続け、亭主の蔡奕哲氏もスタッフの小姐もさぞかしイライラしていたことだろう。おまけに到着した9時はちょうど閉店の時間なのだから。それでも蔡さんはニコニコと応対してくれて(小姐はちょっとムッとしていたが)一時間だけという約束で、早速お茶をいれてくれた。時間もないので、この日はお任せで岩茶を二種。昨年の奇蘭と今年できたばかりの千里香。ここでも大陸茶なのね。え、これが岩茶?とびっくりするような清らかさだった。日本で飲む岩茶とは全く違う味わい。蔡さんは武夷山に行ってきたばかりとのことで、写真を見せてくれた。茶畑を確認し、正真正銘の正岩茶だけを仕入れてくる。彼もとことん有機と伝統製法にこだわって茶葉を選んでいるのだ。お茶を丁寧にいとおしそうにいれる様子がとても印象的。このお店を始めて何年になるのか尋ねると、4年だと言う。その前は日系の電機メーカーに勤めていたそうだ。(日本語はダメらしい。英語はOK。)ずっとお茶が好きだったが、学生の時に電機関係を専攻したので、一定の期間は社会に還元しなくてはいけない、とお勤めをしたのだとか。その誠実な答えにちょっと感動してしまった。スーツを脱ぎ、ゆったりとした服をまとった蔡さんはまさに茶人だった。私はもう少しゆっくり時間を取って台湾のお茶もいただきたい、と告げると明日の夜、もう一度来てくれと約束をとりつける。夕食の予約が入っているので、その客が引ける8時半ごろということになった。台北の旅二日目、長い一日が終ろうとしていた。