まさかのタイミングで日本公開される「今月の韓国映画」
日本も韓国も新型コロナウイルスの感染拡大という未曾有の出来事に直面している。そんな中、日本で公開される韓国映画は、今の状況を描いたかのような内容のものばかり。とても偶然とは思えない。
『ムルゲ 王朝の怪物』
©2018 CINEGURU KIDARIENT & TAEWON ENTERTAINMENT.All Rights Reserved.
映画あらすじ
朝鮮・中宗22年(1527年)。
国に疫病が蔓延する中、仁王山に“物怪”(ムルゲ)が現れるという噂が流れる。ムルゲと遭遇した人間は疫病にかかり、悲惨な死を迎えるという。民衆が恐怖と混乱に陥る中、それに乗じて中宗王の失権を目論む陰謀が密かに計画される。
中宗王は、民衆の不安と危機を一掃するため、かつて政争により朝廷から追放された朝鮮国最強の武人ユン・ギョム(キム・ミョンミン)を呼び戻す。ギョムは長年の同僚であったソン・ハンとずば抜けた弓矢の腕前を持つ愛娘ミョン(イ・ヘリ)、ミョンに恋心を抱くホ宣伝官(チェ・ウシク)と共に、力を失いつつある王と疫病に苦しむ民衆を救うためムルゲの棲む仁王山へと向かうが―。
公式サイト: https://muruge.com/
疫病や怪物に立ち向かう朝鮮の英雄
疫病の蔓延という状況がまさに今の日韓のようだが、韓国での公開は2018年9月。人気俳優キム・ミョンミンやイ・ヘリが出演しているが、観客動員数は72万人だった。『新感染 ファイナル・エクスプレス』や『パラサイト 半地下の家族』にも出演しているチェ・ウシクがここでもまた全然違ったキャラクターを見せてくれる。
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『ムルゲ 王朝の怪物』
(2018年/韓国/105分)
2020 年3 月13日(金)、シネマート新宿、シネマート心斎橋ほか全国順次ロードショー!
ここでは控えめなキャラのチェ・ウシク!
『人間の時間』
(c) 2018 KIM Ki-duk Film. All Rights Reserved.
映画あらすじ
休暇へ向かう約100人の人々を乗せた船が出航する。乗客にはクルーズ旅行に来た女性(藤井美菜)と恋人のタカシ(オダギリジョー)、有名な議員(イ・ソンジェ)とその息子(チャン・グンソク)がいる。さらに議員の警護を申し出るギャング(リュ・スンボム)たちに加え、謎の老人(アン・ソンギ)の姿もあった。
大海原へ出た船上で人々は酒やドラッグ、セックスなど、人間のあらゆる面を見せる。
荒れ狂う暴力と欲望に満ちた夜、次第に霧に包まれていく船。翌朝、乗客たちが気づくと船は未知の空間へと入っていた。そこから出られるのかも分からない状況に唖然とした乗客たちは不安と絶望に陥り、生き残りをかけて悲劇的な事件を次々と起こしていく―。
公式サイト: https://ningennojikan.com/
善悪の境界線を見失った方舟で食欲と性欲にまみれた人間たち
独特の作風で好みは分かれるものの、日本にもファンの多いキム・ギドク監督作品。過去には低予算の地味な作品も多かったが、本作はなんとチャン・グンソクやアン・ソンギといった豪華俳優陣が出演。これまでのキム・ギドク作品とは一線を画している。
パンデミックとなった船上で人間のあらゆる“欲”が暴走し、人が人を傷つけていく。マスクを買い占め、高値で転売した人たちにぜひ見せたい作品。
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『人間の時間』
(原題:『人間、空間、時間、そして人間』/2018年/韓国/122分)
2020年3月20日(金)よりシネマート新宿ほか全国順次公開
あのチャン・グンソクまで欲望をむき出しに!?
『幼い依頼人』
© 2019 EASTDREAMSYNOPEX CO., LTD. & LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.
映画あらすじ
ロースクールを卒業して出世の道を突き進むはずだったジョンヨプ(イ・ドンフィ)は何度も就職に失敗。やむなく臨時で児童福祉館に就職する。
そこへダビン(チェ・ミョンビン)とその弟のミンジュンが訪れる。継母のジスク(ユソン)から虐待を受けているというのだ。姉弟は切迫した状況だったが、ジョンヨプはさほど深刻に考えず、法律事務所への就職を決める。
ところが、ダビンの担任から彼女の鼓膜が破れたことを知らされ、衝撃を受けるのだった。その後、ダビンは弟ミュンジュン殺人の被疑者にされてしまう。不審に思ったジョンヨプは真実を明かすため、ついにダビンの弁護士になることを決意するが、ダビンは心を閉ざし―。
公式サイト:http://klockworx-asia.com/irainin/
日本でもなくならない児童虐待死亡事件は韓国でも・・・
2013年に起きた漆谷(チルゴク)継母児童虐待死亡事件を基に描いた実録サスペンス。女優ユソンのふてぶてしい演技が印象的だ。
本作では実際の事件より虐待シーンをややソフトに描いているが、現実はもっと残忍で、あまりに世間ズレした判決が批判されたのも理解できる。日本でも児童虐待事件が少なくなく、決して他人事ではない。
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『幼い依頼人』
(2019年/韓国/114分)
2020年3月27日(金)よりシネマート新宿、シネマート心斎橋にて公開
大人たちは見て見ぬ振りをしてはいけない。
text:児玉愛子